2005年10月28日

がらくたの山

僕はちいさな頃、飲み干したヤクルトの空や食べ終わったラムネのケースなど、何かに使えそうなものをなんでもかんでも捨てずに取って置いた時期がある。いつか何かを作ろう。これらを組み合わせればきっとものすごいものが出来上がるぞ。と思っていたのである。他人から見ればがらくたでも、本人に取っては宝物に見えるなんてことは、誰にでもあることではないだろうか。
その時の僕は、みかんか何かが入っていたダンボールを親からもらって、次から次へとその何かの部品となるものを入れ続けていた。そんなことを続けるうちにダンボールが一杯になったので、ダンボールのふたを立ててもう少し容量が増えるように工夫した。やがて、僕に割り当てられていた押し入れの半分はその妙な部品で占められるようになった。

と、そこまでは覚えているのである。
しかし、その後どうなったのかどうしても思い出せない。「そんなゴミみたいな物いつまでも取ってないで早く捨てなさい」と親に言われて捨ててしまったのか、何かを作ろうとして断念したのか、何かを作りあげたのか、どうしても思い出せないのである。

仮説を立ててみる。
記憶がないのではなくて、記憶を消されたのではないだろうか?

僕は子供部屋のカーテンを全て閉め切っていた。ダンボールが満杯になったのを機に、かねてから構想していた装置の制作に、遂に、取りかかったのである。
その装置の名は「デシマルレイター形而下エンジン」。それを使うと、理屈では動かない「人の心」を出来るだけ意図した方向に動かすことが出来る。原理は簡単だ。対象となる人の過去の思い出、好きなもの、嫌いなもの、癖、夢などを瞬時に読み取り、あるロジックで計算することによって、その人が最も影響を受ける言葉を選択するのだ。後は感情を込めてその言葉を口にするだけ。所詮は子供の発想だ。たいしたものではない。そもそも3つ下の妹と喧嘩をするといつも親が妹側に付くのが悔しくて、この装置の制作を思いついたのだ。

とはいえ、一日二日で出来上がる代物ではなく苦労もあった。材料が足りなくなったりもしたが、元はがらくただ。いくらでも補充できた。
小学校と子供部屋を行き来する生活が3ヶ月程続いたある日、遂に「それ」は完成した。僕は早速、「それ」を試すために妹に喧嘩をふっかけようとしたその時であった。僕の脳に直接声が響いた。

「素晴らしいものを作り上げたね。私達は是非ともその『デシマルレイター形而下エンジン』が欲しい。譲ってくれないか?」
非常に分かり安い日本語で僕に語りかけた彼の話を要約するとこういうことだった。彼は銀河系の端に存在するシャプレイ星に住む生物で、地球との交流を望んでいる。シャプレイ星では、地球までを約0.6秒で移動することができる程に科学が発達しており、また殆どの地球上の言語を自在に話すことができる程に地球人の研究が進んでいるらしい。しかし、一つだけ悩みがあった。地球人に接触し、地球の言語で話しかけることが出来ても、地球人はおそらくその見知らぬ生物を簡単には受け入れてくれないだろうと考えていたのだ。

「こんなものまた作れるから構わないよ。」
「ありがとう。感謝するよ。」
「うん。君が地球に来た時には一緒に遊ぼうよ。」
「・・・。私達は非常に慎重な性格なんだ。君が二度とこの装置を作れないように君の記憶を消させてもらうよ。本当に申し訳ない。」
「え?」
・・・

仮説とはいえ、いささか現実離れしているだろうか?
なんだか非常に気になって来たので、正月に帰省した時にでも、親に聞いてみることにしよう。
ただ、0.6秒で地球まで来れる程のシャプレイ星人だ。親の記憶を消してしまうことくらいわけないだろう。
posted by takada at 01:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
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